
テーマ=近現代陶芸を代表する作家たち「朝霞市博物館テーマ展示 丸沼芸術の森25周年記念-所蔵コレクション展-」展示予定作品より
展示作品=
板谷波山《香爐》8×9×9cm
藤本能道《金銀彩尾長図扁壺》31×30×20cm
藤本能道《美男桂尉鶲図隅切り大筥》6×31.8×31.8cm
荒川豊蔵《志野茶碗》8.5×13.4×13.4cm
加藤孝造《志野茶碗》10.2×12.9×12.5cm
加藤孝造《瀬戸黒茶碗》10.1×12.6×12.7cm
鈴木三成《青瓷茶碗》7×15.3×15.3cm
鈴木三成《米色瓷茶碗》6.1×14.5×14.5cm
受講者に挨拶をする須崎代表
2010年2月20日(土)より3月14日(日)まで開催を予定している「朝霞市博物館テーマ展示 丸沼芸術の森25周年記念-所蔵コレクション展-」への展示予定作品の紹介。今回は本展の中で[近現代陶芸を代表する作家たち]とのテーマで展示する作品の一部。
「芸術」「art」という概念はもともと日本には無く、明治時代以降、ヨーロッパから輸入されたものである。油彩のように日本には無かった技法と比較し、彫刻や陶芸のように日本にも長い歴史があるものは、「芸術」という概念と日本独自の伝統が影響しあって発達していく事になる。
板谷波山は東京芸術大学(当時は東京美術学校)を卒業した、芸術家としての最初の陶芸家と言える。東京芸大に陶芸科が設置されるのは1955年で、板谷波山が芸大で学んだのは明治時代後期である。波山は芸大では彫刻を学んでいる。卒業後、石川県金沢市の工業学校の木彫の主任教諭となり、その地で九谷焼などにふれた事がきっかけに陶芸の道を歩む。波山の最も有名な特徴は、彫刻的な装飾や、同時代のアールヌーヴォーの影響による絵付け等が挙げられる。日本の伝統美術の「芸術」以前と以後の最も大きな違いは、端的に言えば、作者の個性の作品への反映の度合いと言えるだろう。そして創設間もない美術学校で岡倉天心や高村光雲にも学んでいた波山にとっても、当時の日本の美術界全体のテーマであった、伝統美術の近代化という問題は当然強く意識されていたものであっただろう。それは単に、西洋風を装えば済む話ではなく、日本の伝統を継承した上で発展させる、容易ではないものであった。丸沼コレクションの波山による香炉は、先に述べた特徴である彫刻的な装飾やアールヌーヴォー的な絵付けもなく、むしろオーソドックスなものに見える。波山は、付け刃の西洋風の陶芸ではなく、伝統的な白磁や青磁も学んでおり、その上で独自の様式を開花させている。こちらの作品はそのような波山の姿を確認できるものと言えるだろう。
波山の一世代下には、やはり東京芸大出身の陶芸家である富本憲吉がいる。そして富本に学んだ陶芸家として藤本能道がいる。藤本は芸大の図案科(デザイン)を卒業後、文部省工芸技術講習所(後に芸大に合流)で学ぶ。戦後、実用でなくなく観賞を主体とした陶芸に疑問を持ち、陶オブジェの制作を行うが、伝統から逸脱したオブジェを陶芸で表現する必然性を悩み、むしろ伝統の積み重ねの最前先と言える絵付けの研究を深める。このような、自問自答を繰り返しながらも独自の作品を見出す藤本の姿は、やはり芸術家像としての陶芸家と言えるだろう。
一方で、「芸術家としての陶芸家」以前の「陶工としての陶芸家」としての姿勢を持つ陶芸家として、荒川豊蔵と加藤孝造がいる。荒川豊蔵は京都宮永東山の東山窯工場長を務めた後に、北大路魯山人に招かれ、鎌倉の魯山人の星岡窯に移った後、故郷の岐阜近郊の古窯跡で偶然、桃山時代の志野の破片を発見。それまで通説であった志野焼の産地が瀬戸ではなく、美濃である事を発見。そして、自らの手で志野の復興を目指し独立。古窯跡を調査し、当時の穴窯や釉を研究し、さらに轆轤なども可能な限り桃山時代に近付ける。加藤は荒川に影響を受け、同じく桃山陶にこだわる陶芸家であり、両者とも「現代の陶工」とも言われる。一口に「陶芸」と言っても板谷や藤本、そして荒川や加藤の姿勢の違い、また作品も絵付けや装飾を観賞するか、あるいは土や自然釉の素材感を楽しむか、など大きな違いがある。
鈴木三成は河村蜻山に学んだ後、独立し小田原に自らの窯を設け、40歳頃になって訪れた台湾の故宮博物院でみた南宋時代の青磁に衝撃を受け、磁器に取り組み始める。その作品の特徴は均整のとれたフォルムと釉の独特の色合いが挙げられるが、それは素焼きの素地に幾度も幾度も釉薬を塗っては焼成を繰り返す事によって得られる。その作品の形態はシンプルでオーソドックスと言えるが、技術力の高さから中国の伝統的な青磁に通じる印象を与えるとともに、その幾何学的な形態と釉の質感も相まって、ミニマルで非常に現代的なものにも見える。
今日において、実に多様になった陶芸の表現を、河井寛次郎、濱田庄司の作品も加えた朝霞市博物館での展示で楽しんでいただきたい。