現代日本を代表する作家。神戸に生まれ、画家を目指し多摩美術大学絵画科で学ぶ。卒業後、帰郷し前衛美術集団、グループ<位>を結成、真夏の川原で、11日間ひたすら穴を掘り続け、最後には埋め戻す《穴》(1965)を制作。また、中学校の美術教師を務め、石膏を使った授業で偶然できた、一人の生徒の手型を見て、子供の成長過程の一瞬が刻まれたものとして強い印象を受け、《少年の手》(1964)として発表するなど、活動開始当初より「生命」や「時間」、あるいは自身を取り囲むあらゆる事象の「関係」への眼差しをテーマとした作品に打ち込む。《関係—エネルギー》(1972)では、コンセントからの電気により電球やブザー、発熱機などが動作するインスタレーションで、目には見えないエネルギーの循環の関係を示唆。1980年代半ば以降は、終戦後の焼野原での植物栽培を行った幼少時の原体験やチェルノブイリ原発事故をきっかけに、植物の種子や鉛を用いた一連の作品を発表している。パリ、ポンピドゥー・センターでの「大地の魔術師展」(1989)への招待参加や国内各地での大規模な個展など、近年活躍を続ける一方、私たちが日常生活で忘れがちな感覚を呼び起こしてくれる作品を発表し続けている。
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